竜門騒動の手まり唄



一つとや 竜門騒動は大騒動 二十まで作りた手まり唄歌おうかいな

二つとや 札のいかがを無理として お江戸へ捕られた又兵衛さん 愛おしわいな

三つとや 水のたるよな大小は 差すがよけれど その後はむずかしいわいな

四つとや 様子はこのほうの胸にあり あやまりしだいは こちらから 残念やわいな

五つとや 愛おしござるわ 父君は 松子さん お江戸へ生き別れ 懐かしわいな

六つとや 無理な取り立てなさるから このようになるのももっともや 得心かいな

七つとや 何を言うても身を責める 心の鬼が身を責める我がことかいな

八つとや 屋敷はお江戸に身はここに いとおしござるはいと桜 散りますわいな

九つとや 頃は極月十五日 四ッが村は立ち寄りて ご相談かいな

十とや  年は十六蔵之介  酒屋の息子は大手柄 あっぱれやいな

十一とや 言わず語らず百姓は 胸に包んで その後は難しいわいな

十二とや 憎いヤツじゃと御上から 取っ手の役人 十二人 いざそうかいな

十三とや さらりと簑傘うち揃え 竹槍かたげて おおよりに行きますわいな

十四とや 責め上げられたる 浜島は 登ろとするもの突き落とす まくれるわいな

十五とや 五件四六さまの守 こいつぁまた えらいと見定めて落とそうかいな

十六とや 牢へ入ろと首落ちょと 又兵衛さんの仇とったら本望かいな

十七とや 七尺縄にとつながれて 長い道中引かりょなら 恐ろしわいな

十八とや 鋼をあらわす大庄屋が 松本すじをみとめて行きますわいな

十九とや 国は東国竜門地  こんどの騒動はどこまでも響こうかいな

二十とや 二十まで数えた手まり唄 歌えば響く 吉野山名高いわいな

 

 



奈良県民謡(吉野郡下北山村)。
1818年に奈良県吉野郡の竜門郷の農民が、年貢の軽減を求めて実際に起こした
農民一揆の事が歌われた曲。

数え歌にふさわしく、言葉の頭が数字の印を踏んでいるのが印象的です。



<参考文献> 
牧野英三『五線譜生きる大和の歌』(音楽之友社)
牧野英三『日本わらべ歌全集 17上 奈良のわらべうた』(柳原書店)




竜門騒動の手まり唄(抜粋 version)